10月24日に神奈川県教育委員会より、公立高校入試の募集定員が発表されました。今年も一部高校でクラスの増減が行われました。
この記事では定員の変更があった高校を中心に、個人的に気になるポイントをまとめていきます。
公立高校の選考方法についてはこちらをご覧ください。
募集定員改定の影響
募集定員は1クラス(40人)単位での増減が行われます。募集定員が増えた場合、以下のような影響が出ると考えられます。
- 入試倍率の低下
- 合格ラインの低下
- 近隣高校の受験難易度の変動
入試倍率の低下
募集定員が増えればその分、合格する受験生も増えます。「受験者数が変わらなければ」という前提ですが、理論上は定員が増えた分だけ入試倍率が下がります。
募集定員変動の倍率試算
| | 元の倍率が 1.10倍 | 元の倍率が 1.20倍 | 元の倍率が 1.30倍 | 元の倍率が 1.40倍 |
|---|---|---|---|---|
| 9クラス ⇒10クラス | -0.11倍 | -0.12倍 | -0.13倍 | -0.14倍 |
| 8クラス ⇒9クラス | -0.12倍 | -0.13倍 | -0.14倍 | -0.16倍 |
| 7クラス ⇒8クラス | -0.14倍 | -0.15倍 | -0.16倍 | -0.18倍 |
| | 元の倍率が 1.10倍 | 元の倍率が 1.20倍 | 元の倍率が 1.30倍 | 元の倍率が 1.40倍 |
|---|---|---|---|---|
| 9クラス ⇒8クラス | +0.14倍 | +0.15倍 | +0.16倍 | +0.18倍 |
| 8クラス ⇒7クラス | +0.16倍 | +0.17倍 | +0.19倍 | +0.20倍 |
| 7クラス ⇒6クラス | +0.18倍 | +0.20倍 | +0.22倍 | +0.23倍 |


実際には受験者数も増えることが多く、必ずしも『募集定員増=倍率低下』とはならないこともあります。
2025入試で募集定員が行われた高校と倍率
| 高校 | 2024年入試 | 2025年入試 | 倍率の変化 |
|---|---|---|---|
| 港北 | 1.29倍 | 1.31倍 | +0.02 |
| 金井 | 1.14倍 | 1.12倍 | -0.02 |
| 横浜立野 | 1.46倍 | 1.35倍 | -0.11 |
| 七里ガ浜 | 1.42倍 | 1.31倍 | -0.11 |
| 平塚湘風 | 0.93倍 | 0.80倍 | -0.13 |
| 鶴見総合 | 1.20倍 | 1.16倍 | -0.04 |
| 高校 | 2024年入試 | 2025年入試 | 倍率の変化 |
|---|---|---|---|
| 松陽 | 1.14倍 | 1.11倍 | -0.03 |
| 藤沢西 | 1.29倍 | 1.42倍 | +0.13 |
合格ラインの低下
募集定員が増えると合格のボーダーラインが下がります。入試では「1点の差が明暗を分ける」ということが多々ありますが、合格者が1クラス分増えると(高校にもよりますが)10点ほど合格ラインが下がる感覚です。
近隣高校の受験難易度の変動
募集定員が増え受験難易度が下がると、その高校へ志望校を変更する層が一定数出ます。偏差値帯が1つ上または1つ下の高校からの流入が発生し、近隣高校の受験難易度にも若干の変動が起こり得ます。
2026年入試 募集定員改定の概要
今回募集定員の変更があった高校は、過去1~2年に変更を行った高校が多いです(高校の統廃合のケースを除きます)。また直近のクラス数の増減を修正するような変更が目立ちました。
2026年入試より募集定員が改定される高校(統廃合のケース除く)
募集定員の改定があった高校と注目点
川和高校


特色検査を実施する「学力向上進学重点校」の1つです。2023年の倍率が1.19倍と学力向上進学重点校としては低倍率となりました。その翌年に1クラス減を実施し、着実に倍率は上がってきました。今年は1クラス増で2024年入試の水準まで下がるのか注目です。
松陽高校


横浜中地区にある学力向上進学重点校の次のレベルに位置する高校です。2025年入試で1クラス減の改定を行いましたが、倍率の水準は大きく変わりませんでした。
また、今年の入試より1次選考基準を変更した高校の1つでもあります。「募集定員の緩和」と「入試選考基準の変更」といった入試倍率が下がりそうな要因が多い高校です。
舞岡高校


今年の入試は1クラス減の改定ですが、過去3年の倍率推移はよくわからない挙動をしています。2024年入試でかなりの高倍率になった翌年、1クラス減の改定を行ったものの倍率は急低下(前年の高倍率を嫌ったのが要因?)。その翌年の2025年入試は大きな変動はありませんでした。今年のクラス数改定はどのような影響が出るのか、予想がつきにくい高校です。
生田高校


今年の1クラス増により1学年10クラスの規模となります。過去の募集定員改定では2024年入試で1クラス減により倍率が上昇しました。定員改定が無かった年はおおむね全県平均の1.20倍近い水準です。今年の入試は一時的に倍率が低下するものの、翌年にはもとの倍率水準に戻るのではないかと思います。
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百合丘高校


生田高校同様、1クラス増により1学年10クラスとなります。2024年入試で1クラス減の改定が行われましたが、直近2年では倍率が1.1倍台を割り込んでいます。倍率が低下傾向の中のクラス増となり、定員割れも考えられます。
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追浜高校


横須賀・三浦地区の2番手校です。例年は同地区トップレベル校の「横須賀」と定員の取り合いとなっていますが、2025年入試では1.41倍とかなりの倍率となりました。今年のクラス増によってこの倍率が少し落ち着くのではないかと思います。
鎌倉高校


特色検査を実施する学力向上進学重点校の1つです。2024年入試のクラス減によって一時的に倍率が上昇しましたが、例年は1.30倍付近の水準で、学力向上進学重点校としては低めの水準です。今年は1クラス増で定員緩和されますが、同じ地区の2番手校に相当する「七里ガ浜」が1クラス減となるため、ある程度の受験生の流入が予想されます。
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七里ガ浜高校


湘南・鎌倉地区の2番手校で、上述の「鎌倉」に次ぐ位置づけの高校です。倍率は2番手校としては高く、1.4倍台が続きました。2025年入試で1クラス増により少し倍率が下がりました。今年はその募集定員改定をもとに戻す形になるので、倍率も1.4倍台に戻るのではないかと思います。一方、同じ地区で1つ上のレベルである「鎌倉」や同水準の「藤沢西」がクラス増となるため、受験生の流出も予想されます。
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藤沢西高校


こちらも湘南・鎌倉地区の2番手校です。「七里ガ浜」ほどではないですが、例年の倍率は約1.30倍と比較的高い水準で推移していましたが、2025年にクラス減が行われ倍率が跳ね上がりました。今年は湘南・鎌倉地区で募集定員改定を行う高校が多く変動が気になるところです。
寒川高校


こちらも湘南・鎌倉地区の高校です。直近3年は定員を大きく割れています。今年はクラス減ということで倍率は多少上昇することが考えられますが、定員割れを解消するまでには至らないと思います。
伊志田高校


秦野・伊勢原地区の2番手校です。もとより高校数が少ない地区で、地区全体での入試倍率も1.1倍を割り込む水準です。その中で、伊志田高校は1.14倍と地区全体の倍率を上回る水準ですが、2024年にクラス減を行った後の水準です。この状況でクラス増のため、2023年の1.04倍のようなレベルまで倍率が低下することも考えられます。
西湘高校


こちらも比較的高校数が少ない県西地区の2番手校です。県西地区には1つ上のレべルに「小田原」,下のレベルには「足柄」がありますが、かなりの格差があるため、定員変更によって志望校を変えるという層は少ないと考えます。
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座間高校


県央東地区にある学力向上進学重点校に準じるレベルの高校です。県央東地区には学力向上進学重点校、同地区ではトップレベルの高校で人気も高いです。今年のクラス増によって特色検査を嫌う層が一定数流入することが考えられます。
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横浜清陵高校


横浜南地区の中堅レベルの高校です。中堅層の高校ですが入試倍率は地区内平均の1.25~1.30倍の水準を上回ります。今年は1クラス増である程度は倍率も落ち着くのではないかと思います。
座間総合高校


全日制では唯一、募集定員の改定が行われる総合高校です。2025年の倍率は1.17倍と全県平均に近い水準ですが、過去には1.06倍の年もあり、今年のクラス増により定員割れも見える水準でもあります。
まとめ
選考基準の改定と同様に、募集定員の改定は該当する高校だけでなく周辺校にも影響が出ます。気にしすぎる必要はないですが、「志望校に対して合格可能性がギリギリで志願変更するか悩む!」といったラインの人は注目要素の1つだと思います。
倍率については出願後~志願変更前のタイミングで一度公表されますが、ある程度のヒントとして募集定員改定は注目しておくと良いでしょう。
出典
神奈川県HP「令和8年度神奈川県公立高等学校生徒募集定員について」
令和8年度神奈川県公立高等学校生徒募集定員数









