神奈川県の公立高校入試において、倍率の推移や変動要因を理解することは、志望校の最終調整で非常に重要です。この記事では、過去5年間の倍率の推移や、倍率が変動する要因について詳しく解説します。受験生や保護者の方々が、志望校選びの参考にしていただければ幸いです。
そもそも倍率って?
「募集定員に対して何人の受験志願者がいるか」の割合を表したものです。
例. 定員が300名のA高校に360人の受験生が志願した場合、倍率は
360÷300=1.2倍
となります。
倍率が1より大きくなるほど不合格者が増えます。一方、1より小さくなると「定員割れ」となり数字上は志願者が全員合格となります(実際にそうなるかとは限りません)。
別の見方をすると、「倍率の1を超えた分(例.の場合だと0.2)×定員」が不合格となる人数といえます。
旧学区と倍率
過去の入試制度では「学区制度」があり、出願できる高校は学区によって限定されていました。
現在は学区制が廃止されています。しかし、通塾時間を考えるとなかなか旧学区外の高校は選びにくいのも事実です。旧学区の影響は残っており、地域ごとの倍率の特徴が見られます。
一方で人気のある高校は「たとえ遠くても通いたい!」というニーズがあります。こういった学区制度廃止によって生まれた傾向もあります。
神奈川県全体の倍率
神奈川県公立高校の倍率は大体1.20倍くらいです。前年の志願者数や人口動態などから、クラス数の増減や高校の統廃合を行い、バランスをキープしています。
また、「自己表現」型の特色検査を実施しているような、いわゆる上位校は人気が高いです。低くても1.4倍台、場合よっては2.0倍を超える倍率となることが多いです。
過去5年の神奈川県共通選抜の平均倍率
令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 |
1.19倍 | 1.20倍 | 1.20倍 | 1.21倍 | 1.20倍 |
倍率が変動する要因
定員数(クラス数)の増減・高校の統廃合
出願状況などを考慮し、高校ごとにクラス数の増減が行われることがあります。
(志願者数が変わらない場合)クラス数が増えれば、その分倍率が下がります。クラス数が1つ変動すると(もとの定員数にもよりますが)単純計算でおおよそ倍率は0.1~0.2倍程度変動します。
計算上のクラス減と倍率の変動(志願者数が変わらなかった場合)
元の倍率が 1.10倍 | 元の倍率が 1.20倍 | 元の倍率が 1.30倍 | 元の倍率が 1.40倍 | |
9クラス⇒8クラス | +0.14倍 | +0.15倍 | +0.16倍 | +0.16倍 |
8クラス⇒7クラス | +0.16倍 | +0.17倍 | +0.19倍 | +0.20倍 |
7クラス⇒6クラス | +0.18倍 | +0.20倍 | +0.22倍 | +0.23倍 |
令和7年にクラス数の変動があった高校(インクルーシブ募集除く)
高校 | クラス数の増減 | 令和6年入試倍率 | 令和7年度入試倍率 | 倍率の変動 |
松陽 | -1クラス | 1.14 | 1.11 | -0.03 |
七里ガ浜 | +1クラス | 1.42 | 1.31 | -0.11 |
藤沢西 | -1クラス | 1.29 | 1.42 | +0.13 |
港北 | +1クラス | 1.29 | 1.31 | +0.02 |
横浜立野 | +1クラス | 1.46 | 1.35 | -0.11 |
金井 | +1クラス | 1.14 | 1.12 | -0.02 |
鶴見総合 | +1クラス | 1.20 | 1.16 | -0.04 |
平塚湘風 | +1クラス | 0.93 | 0.80 | -0.13 |
クラス数の増減に影響する要因は次のようなものがあります。
人口の増減
受験生人口が増えれば、その分倍率が上がることが考えられます。ただし、人口の増減はある程度予想がつきます。クラス数を増減させる要因の1つであると考えられます。
県立高校改革の計画の全期間を通じて、次の考え方に基づき再編・統合を行います。
- 公教育の保障の観点から、生徒数の動向に応じた学校数・学級数を確保
- 全規制進学率の向上を図るため、必要な定員数を確保
- 全県を、隣接する旧学区を組み合わせて区分した5つの地域を基本に再編
- 中学生の進路希望や高校タイプ等の地域バランス、生徒の通学利便性などに配慮した適正な配置
- 校舎の状況や適正な学校規模への拡大の可能性などの観点から、計画的な適正配置を目指した再編・統合
- 学校を核とした地域づくりの視点を勘案
改革を通じて、県立高校は、計画当初の142校(他、分校1校)から、20~30校程度の減となります。
引用:神奈川県教育委員会「県立高校改革実施計画」
高校の人気
進学実績や部活動の活躍などで、高校の人気が高まり志願者が偏ることがあります。
設備の更新・制服の変更
校舎の建て替えなどの設備更新,制服が新しくなるなどで一時的に高校の人気が高まる場合があります。このような情報が配信された年は、倍率が高くなることがあります。
前年度の倍率
前の年の倍率によって高校の見方が変わり、倍率が変動する場合もあります。前年の倍率が高くなった場合、合格のボーダーラインが上がり「合格しにくいかも…」という気持ちから志願者が減る傾向があります。
あくまで傾向ですが、倍率が急激に変動した場合は次の年にもとに戻ろうとする動きが多いように感じます。
地区ごとの倍率傾向(令和7年度入試)
地区 | 高校数 | 地区倍率平均 |
横浜北地区 | 20校 | 1.34倍 |
横浜中地区 | 16校 | 1.14倍 |
横浜南地区 | 13校 | 1.27倍 |
川崎地区 | 18校 | 1.14倍 |
横須賀三浦地区 | 9校 | 1.09倍 |
鎌倉湘南地区 | 14校 | 1.22倍 |
平塚地区 | 7校 | 1.03倍 |
秦野伊勢原地区 | 5校 | 1.08倍 |
県西地区 | 8校 | 0.88倍 |
県央西地区 | 9校 | 1.03倍 |
県央東地区 | 7校 | 1.14倍 |
相模原地区 | 12校 | 1.07倍 |
参考:神奈川県HP「令和7年度神奈川県公立高等学校入学者選抜一般募集共通選抜等の学力検査等受検者数等について」
(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/nyusen/jisshikekka/r7jukensyasu.html)
※学区については神奈川県HP「はいすくーる・わんだーらんど」に準拠して分類しています(定時制除く)。
※地区ごとの平均倍率については高校別の単純平均をとっています。
地区別の詳しい分析はこちら!
倍率を見て志望校変更するタイミングと注意点
倍率の発表後、志望校の変更を検討する際には、以下の点に注意が必要です。
倍率だけで判断しない
倍率はあくまで一つの指標であり、学校の教育内容や自分の適性、通学距離なども考慮する必要があります。少なくとも「倍率が低いから」という理由で志望校を決めるのはやめましょう。
ボーダーラインぎりぎりで受験する場合は要注目
内申点や模試での判定で「合格するか微妙…?」というレベルで志望校に挑戦する場合、倍率は要注目です。
前年より上昇した場合はボーダーラインが上昇する可能性が高いです。志望校を変更するかの判断が必要になります。

「こちらが正解!」というのは受験前にはわかりません。
「自分が納得できる受験」を選びましょう。
志望校を変更するかのポイント
「絶対公立」なのか「私立でも可」なのか
費用面から「絶対に公立!」というケースもあると思います。その場合は「合格可能性が高いレベルまで志望校を下げる」という選択になると思います。
併願校に納得ができるか
「私立でも可」という場合は、「倍率が高くても挑戦したいかどうか」が焦点になると思います。
「志望校を下げて少しでも可能性を上げる」というメリットの裏には「もし志望校に挑戦していたら…?」という後悔があります。「自分が納得できる受験」になるかはこの2択を受験生自身が考え、選択することにあるように感じます。

本当に悩ましいポイントです。
一方、自分で決めることが大事なポイントでもあります。
学校や塾などから情報を集め、納得ができる判断ができるのが理想だと思います。
まとめ|倍率の情報をどう活かすか
倍率はあくまで一つの指標であり、少なくとも高校選びの際に重要視する点ではありません。学校の教育内容や自分の適性、将来の目標などを総合的に考慮することが重要です。倍率の推移や変動要因を理解することで、志望校の最終調整の参考にしてもらえればと思います。